大判例

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東京高等裁判所 昭和47年(う)446号 判決

被告人 山田隆英

〔抄 録〕

検察官の控訴趣意は、原判示第二の事実に関し、

検察官がこれを強盗として起訴したのに対して原判決が窃盗として認定し、その法条を適用したのは、判決に影響をおよぼすことの明らかな法令適用の誤まりがあり、ひいては刑の量定が軽きに失するから、原判決を破棄したうえ、さらに相当な裁判をするよう求めるというものである。

そこで所論にかんがみ記録を検討してみると、検察官が被告人は原判示の日時、場所において通行中の被害者を強いて姦淫しようと企て、同女の背後から抱きついて引倒し、その上にのりかかり、口を手でふさぎ、首をしめるなどの暴行を加えて反抗を抑圧した際、被告人の右暴行により反抗を抑圧された同女から、その畏怖に乗じ、その所持する同女所有の現金二、二五〇円在中のがま口一個等を強取したとの趣旨の事実につき公訴を提起したのに対し、原判決は強姦致傷として認定した前記原判示第一事実を受けて第二事実として、右の犯行の途中、被告人の前記暴行によって畏怖した被害者が難を免れるためさし出した現金二、二五〇円等在中の財布、マッチ各一個および煙草一箱を奪い取って窃取した、との趣旨の事実を認定してこれに刑法第二三五条を適用したことが明らかである。ところで本件においては、すでに判示第一事実に関して説示したように、被告人は被害者に対し、これを強姦する意図をもって暴行を加え、その程度は原判決の掲げる関係証拠によれば同女の反抗を抑圧する程度に至ったと認められるのであるが、同証拠によると被告人の暴行により畏怖した同女が難を免れるため差出した原判示財布等を、同女がすでに畏怖していることを知り、同女の上半身におおいかぶさったまま、同女の畏怖しているのに乗じて奪取したこともまた明らかであるから、たといその畏怖状態が被告人の強姦を意図した暴行により惹起されたものであっても、これは刑法第二三六条第一項の強盗をもって論ずべきものである。原判決はこれを窃盗と認定した理由として、犯人が別個の目的により相手方に暴行、脅迫を加えてこれを反抗不能の状態に陥れた後に初めて財物奪取の犯意を生じてこれを実行に移した場合、たといその程度は軽くとも暴行または脅迫と評価し得る行為が、前記犯意を生じた後になければ強盗の成立はないものと解しているもののようであるが、本件の如く被害者の畏怖状態を被告人自身の暴行により惹起していて、かつ前記のような情況下にある場合、強盗罪の成立を否定する理由は見当らないのであって、かように解しても刑法第一七八条の規定の存在となんら矛盾するものとは考えられない(もっとも、被害者の原審法廷における供述によれば、畏怖状態にある被害者の差出した財布等を被告人は「ひったくった」というのであるから、原判決のいう新たな暴行もあったと解されないわけでもない。)。結局、原判示第二事実を窃盗に該当すると認定し、これに刑法第二三五条を適用した原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤りの存することが明らかであり、検察官の控訴は右の点において理由がある。

(吉田 大平 中久喜)

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